戦い、再び ~山吹護岸・序章編~
HP担当は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
HP担当には現場がわからぬ。HP担当は、一介の主婦である。
口笛を吹き、子と遊んで暮らして来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった―――。
(太宰治著 走れメロス引用)
いつものことですが、本工事もあの時期がやってまいりました。
そうです。
ICT建機に取り込むための3次元設計データ作成です。
私、HP担当以外に、この設計データ作成担当でもありまして、
この工程になると、毎回、現場代理人とわたしとの間で冷戦が勃発します。
そして今回。
まだ本当の取っ掛かりの部分に足を踏み入れたところですが、すでに凍てついております。
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昨日のそんな時間帯の現場事務所にT土木のHろみくんが来た。
ツンドラ感を感じ取ったHろみくんは「エライところに来ちまったなぁ」と言って逃げて帰った。
そして、今朝。出勤前。
iPhoneが着信を告げたので、見ると通知に"1"とついている。
誰だろう?とメッセージアプリをタップすると、早朝から出勤している現場代理人からだった。
『今日の弁当、一つ追加でお願い』
わたしは、HP担当と設計データ作成担当と同時に、お弁当の注文担当でもある。
その日の昼食にお弁当を注文する人は、わたしが出勤するまでの間に所定の用紙に記入してもらい、
それを取りまとめて、毎朝お弁当屋さんに発注している。
いつもより注文が一つ多いので、念のため連絡をくれたのだろう。
だが、メッセージ。
電話ではなく。
普段なら電話なはずだ―――。
わたしは出勤のため、黄色い社用車に乗り込んだ。
脳内で昨日の罵り合いが再生される。
ほぉそういうことか。
あのツンドラ劇があったからもうわたしとは話もしたくないってことか。
そうきたか。
そっちがそうならこっちはあれだ。
喫煙ルームのヤツを最果ての地へ、というのはどうだ。
Hろみくんに頼んでバックホーで運んでもらおう。
ヤツを吊るしたBHが、カタカタと音を立てて最果ての地へ向かう様子を想像して
わたしはほくそ笑んだ。
雨の日も風の日も台風の日も大雪の日も32.972m歩けばいい。
わたしは黄色い従順な社用車のハンドルを強く握りしめた。
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というわけで、今回もこの作業をする工程に差し掛かっております(泣)
毎回そうですがうまくできるか…。不安しかないです。
しかしやるしかない。
また、経過をご報告できたらと思います。